S様 もともとは、購入した建売住宅に住んでいたのですが、子どもの学校の送り迎えの負担が増えて、なるべく学校の近くに住み替えたいと考えていたんです。ただ、住み替えはまたお金かかりますから、どうしたもんだろうと。ましてや建築家の方に建てていただくなんて考えもしていませんでした。
―――そんな中で、建築家松田さんにご依頼されたのはどんな経緯だったのですか?
S様 これまで住んでいた建売住宅が、気に入ってはいたのですが、人がつくった間取りの中で、そこに合わせて生活をしなければいけないのが窮屈に感じていました。次住むなら、少しでも自分たちらしい暮らしが叶う方法でつくりたかったんです。
S様 子どもの学校のこともあったので、住み替えを本気で考えはじめ、ネットで物件など色々と見ていました。そこにたまたま、facebookで「田園都市建築家の会(以下、「田都会」)」の広告が出てきまして。そこに松田さんの作品事例が紹介されていて。木がふんだんに使われていてとても素敵でした。
松田 そうでしたね。Facebookへの広告当番がちょうど僕で。見つけていただけてよかったです。
S様 とても素敵だったのですが、建築家との家づくりとなると、お金も時間もかかりそうというイメージがあったので、自分たちだけだったらお願いしなかったかもしれません。田都会について調べてみると、家づくりのコーディネートをしてくださる方がいらっしゃるということだったので「私たちにもできるかも!」と思い、話を聞きにいってみたんです。
松田 最初に田都会にお越しいただいた時、僕がちょうど当番でお話しさせていただきました。家の建築は私が担当し、それ以外のお金のことや細かなことはコーディネーターがいますので色々と任せていただけます、とご説明しました。お金のことを相談できる担当者がいることが安心に繋がったのかなと思います。
S様 自分としては、住宅購入は一度経験していたので、なんとなくイメージはわかるものの、建売でない場合、土地購入時と工事開始時でローンが分かれることは知らなかったですし、買い替えなので、住んでいる家を売却しなければいけない状況もありました。これらをひとりでやる、というのは無理でしたね。
―――家の買い替えとなるとなんだか複雑な印象ですが、どのように進めていったのですか?
FDB 方法は大きくふたつあります。ひとつは、住んでいる家を先に売り、どこかで仮住まいをしながら新居の建築設計を進める。もうひとつが今回のケースで、住んでいる家を持ちながら新たにローンを組み、新居が完成したと同時に住み替える。
―――断然、後者のほうがいいですよね。
FDB そうなんです。まずはそのスキームを組めるかどうか、私の方で銀行と相談するところから始めました。一時的に現在の住宅ローンを借りつつ、新しい家の住宅ローンを引き出す。ここがこのプロジェクトのポイントだったので銀行担当者と打ち合わせを重ねながらどうしたら融資が成立するかを探りました。結果、「なんとか資金調達も出来そうだ」となり、Sさんにご報告をしました。
S様 FDBさんには「パターンはこれとこれがあります。選んだ選択肢がダメだったとしても、次はこんな方法もとれます」と、それぞれにオプション・ステップ・可能性を示してくれたのでありがたかったです。なので一つ一つ納得しながら買い替え計画を進めていけたと思います。FDBさんの助けがなかったら、後から「え!こんなパターンもあったの?」と、後悔が残っていたでしょう。
FDB 新しい家の購入資金(住宅ローン)の調達の目途もたったので、物件探しと売却を任せていただくことになりました。今回はさらに建築のスケジュールも絡んでくるので、全体を上手く調整する必要がありました。すべてをご自身で調整するには非常に大変ですから、お任せいただけたのはよかったと思います。
―――銀行は様々ありますが、どのように決めていったのですか。
FDB そういったスキームが組める銀行は限られているのですが、今回は、最初の住宅購入時にローンを組んだ銀行にお世話になりました。同じ銀行であればローンの組み換えをするのがよりスムーズですからね。銀行の担当者もとても対応がよかったんです。
―――FDBさんは銀行とのコネクションが多くありますからね。
FDB そうですね。その銀行では特に、いくつも案件をお願いしてきた信頼関係もあったので、今回も一緒に色々と考えて頂き、ローンを通すためにはどうしたらいいかと真摯に取り組んでくれました。難しいスキームのケースでは、なかなか親身になってくれないこともあるんです。
松田 建築家自身も銀行の担当者にパイプがあるわけではないですから、私はFDBさんの経験値に頼ることが多くあります。それぞれ得意分野がありますから、その専門家でチームを組むことがいい仕事につながると思っています。
S様 もともと住み替えを考えていたので、物件は地域も絞って事前にかなり探していました。資金的にも気持ち的にも、中古購入+リノベーションが妥当だろうと考えていました。結果的には、随所にこだわってしまったので、新築と代わり映えしない仕上がりですけどね(笑)。
松田 最初にお聞きしたご希望とご予算では「そこまではできないな〜」と頭を抱えました(笑)。
S様 この物件は、事前にネットでは見つけていたのですが、陽が入らない印象があったので外していたんです。新居では吹き抜けと開放的なキッチンが欲しかったものですから。
松田 間取りをガラッと変えて陽を遮る植木を整理すればご希望に添えるのではないかと考え、Sさんと何度も足を運んで、ラフスケッチをお見せしながら、イメージを固めていきました。
―――中古物件の築年数はどのくらいだったのですか。
FDB ここは築30年でしたね。木造は築20年超えると住宅ローン控除が適用しないんです。そこは事前に検査してもらい、今の基準に適合しますという証明を取得して、ローン控除が使えるようになります。
S様 FDBさんに色々と調査していただき、耐震の問題や、補助が出るとか、控除が適用するかとか、諸々の懸念事項がクリアーになったので、総合的に考えここを買う判断ができました。
S様 売却物件の周辺が建設ラッシュになり、まわりの新築が同等の値段で出始め、とき同じくして、コロナ渦とも重なったので慌てましたね。
FDB 資金計画は売却希望価格を見据えて組んでいます。また、ローンの残債があったので、それより下がってはいけないという事情もありましたからね。 なかなか売却には厳しい時期だったので金額を下げないで売り切る為に色々と考えました。ターゲットは同じ学区内のファミリー層と仮定して、住宅を購入した際の返済金額が家賃と同じくらいになる学区内の賃貸マンションを中心にチラシを手巻きで投函しました。あと周辺の新築との差別化をはかるためにチラシにも工夫をしました。物件が高台に位置していて眺望が抜群の建物だったので、その良さを最大限伝わるように使う写真、文章など内容もかなり考えました。それが功をそうしてか狙い通り学区内の方に購入をして頂けました。
S様 FDBさんが近所でチラシのポスティングをしてくださっているのを見かけて。それも3回も!ありがたかったです!
FDB 見られていたんですね、なんか恥ずかしいですね(笑) でも今回はチラシを有効的に活用できたのが良かったです。
=取材後記=
高台に建つSさんのご自宅。お邪魔した際ちょうど奥様が玄関アプローチで草花を積んでいらっしゃいました。陽が気持ちよく風が抜けて、まるで女神が降臨したかのような眩しく印象的なシーンでした。取材の中でも「住んでみると益々愛着が湧いてきます」とおっしゃっていたとおり、パパと寝転がって遊ぶ場所、勉強する場所、本を読む場所、仕事する場所と、場面によって家での過ごし方をご家族みなさまで存分に楽しんでいらっしゃいました。
FDBさんの取材では、お住み替え(買い替え)を「買い先行型」で実現されたお施主をうかがうのは初めてでしたので、お話も興味深いものでした。ローンの切り替え、新居の住宅ローンの実行、建築設計のスケジュール調整、売却のタイミングと、複雑さも増していきますから、家の完成に向けて共に取り組んでくれるFDBさんにコーディネートしてもらうことは、もはや“必須”と言っても過言ではないですね。
Sさん、貴重なお話をありがとうございました!