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建築家が建てる分譲モデルハウス|地の利を生かした高性能住宅の新しいカタチ

建築家が建てる分譲モデルハウス|地の利を生かした高性能住宅の新しいカタチ

連載
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建築家が建てる分譲モデルハウス|地の利を生かした高性能住宅の新しいカタチ

Freely Design Boxが企画販売しているコンセプトハウス〈KIBARI〉に省エネ性能をアップグレードした新シリーズ〈KIBARI Plus〉が誕生します。今回はKIBARI Plus第一弾となる分譲モデルハウスを設計した建築家の宮﨑俊行氏とフリーリーデザインボックスの放談をお届けします。

話し手:
KIBARIプロデューサー/Freely Design Box 当山、西村
KIBARIデザイナー/宮﨑建築設計事務所 宮﨑

省エネ性能を高めたコンセプトハウス

━━まずは〈KIBARI〉と〈KIBARI Plus〉の違い、あるいは特徴を教えてください。

西村 KIBARIは国産木材の有効活用を目的として私たちが企画した、いわゆるコンセプトハウスです。設計の工程でできるだけ無駄を省いてコストカットしたり、お施主さまが家づくりの楽しいところだけに集中できるように進行管理を工夫し、部材や建材をかっこいいものにこだわってセレクトしている企画住宅です。ただし、KIBARIが普通のハウスメーカーや工務店の企画住宅と異なるのは、ある程度の規格(縛り)はあるけれども、間取りに関しては限りなく制限をなくし、コンセプトに共鳴してくれている建築家がデザイナーとして参加しているので、お施主さまの理想の暮らしを叶えるために一邸一邸オリジナルの自由設計である点です。

宮﨑 KIBARIの性能の面についてお話しすると、もともとKIBARIは神奈川県内での販売を主としていたため、寒い地域に比べるとそこまで高断熱な仕様にはなっていません。建設コストとのバランスを考えてHEAT20 G1相当レベルの断熱性能を標準仕様としています。加えて、建築家が地域特性に合ったパッシブデザインの考えで建物の配置やプラン、庇を含む断面を設計しているため、計算値以上の快適さが確保できていると自負しています。

当山 実際にKIBARIのオーナー様からは「今年の冬はほとんどエアコンが要らなかった」「快適に過ごせている」とご好評をいただいております。

KIBARIオーナーのInstagramより
熱取得量を色で可視化したもの。左側は冬場、右側が夏場の状況。

宮﨑 G1レベルの断熱性能があれば比較的低コストで「長期優良住宅」や「こどもエコすまい支援事業」の申請はできます。一方で、最近は燃料高の影響やSDGsへの関心の高まりなどを受けて住宅の断熱性能や気密性能をより重視するお客様も増えています。KIBARIの家づくりにおいても、お客様の選択肢を増やすべく今回はより断熱グレードの高い住宅をモデルハウスで設計することにしました。

西村 ちょうど良いタイミングで土地を確保できたので以前から取り組んでみたかった分譲型のモデルハウスを建ててみようという事になりました。

当山 実際に体感していただける場所があると、「どんな家に住みたいか」っていうふわっとしたイメージがより具体的になりますからね。かねてからモデルハウスを作りたかったので、本当にいいタイミングです。省エネ性能をアップグレードするということで新シリーズのネーミングは「KIBARI Plus」になりました。

宮﨑 現在建設中のモデルハウスの断熱仕様は、HEAT20 G2レベルを想定しています。

建築家ならではの土地の区画アイデア&エビデンス

100坪の広大な土地をどうわけるか?

━━分譲モデルハウスの土地について、区画のアイデアが面白いと伺いました。

西村 もともとは道路に広く面した100坪ほどの土地です。これだけ広いと土地の価格だけでかなりの高額になってしまいますから土地を二つに分けて、片方に分譲できるモデルハウスを建てようということになりました。この場合、普通なら南向き、つまり道路に垂直になるよう2軒を縦に並べる区画を作ると考えられますね。(下図参照)

宮﨑 当初はこの縦割りの区画で設計プランを立てていました。しかし、この区画だと間口がとても狭く限られてしまい、抜けの良い方角に窓を作ることができないのでせっかくの眺望を生かすことができません。真南はちょうど道路の向かい側の家が視界に入ってしまいます。また、西側の家(上図の家1)は挟まれた両側の家の影になってしまい十分な日照を得られません。分かりやすく南向きに2軒並べるというセオリーはハウスメーカーでよくやることだし、せっかく設計を専門としている僕のような建築家が入るので、もっと地の利を生かした土地区画を提案した方がいいと判断しました。

当山 ここは西から東に向かって下り坂になっているので、見晴らしが素晴らしい。特に東一帯に戸塚カントリークラブの大きな森があって、南東に猿田彦神社、南西に緑園東公園、という具合にどこを向いても緑に溢れています。この景色を生かさない手はありません。2軒とも真南を向くよりも、ちょっと工夫して東の眺望を取り入れたいところですね。

━━では、縦ではないということは・・・?

宮﨑 はい。横に並べるプランを考えました。2軒それぞれの配置や家の窓の抜け感などをきちんと設計すれば、すごく静かで落ち着いた家に仕上がるのではないかと気が付きました。また、設計次第では奥の家でも日射や眺望が確保できる可能性を感じました。そこで、「分譲モデルハウス」と「北側の家」の両方をデザインし、日照シミュレーションを使って2軒とも十分な太陽の光を得られるか検証しました。

2軒とも十分な日照を得られることが計測できています。これであれば、当初の縦に区画された間口の狭い南向きよりもはるかに効果的なプランですね。建築家ならではのプランニング!

西村 道路から見て奥にあたるL字の形をした土地を「旗竿地」といって、普通はネガティブなイメージがつきやすいものです。不動産屋としては、仮にもし短期間にこの土地を売らなければならない場合はかなりハードルが高いですね。初めてプランを聞いた時はなかなか思い切った策に出たな〜というかんじでした。逆に言うと、土地のポテンシャルを最大限に引き出せる建築家ならではの提案なので、ここまでしっかり土地の説明ができれば、旗竿地のネガティブなイメージを払拭できると考えています。

旗竿地は、普通の不動産屋やハウスメーカーではハードルが高いかもしれませんね。
東一帯が谷になっていて東側の隣家も一段下がっているので、宮﨑さんが設計した2Fリビングからの眺めには影響がありません。土地の売りやすさよりも眺望を生かす考えの方が土地の価値を高める提案ですね。

━━普通は「旗竿地」と聞いただけでNG出しそうですよね。でも、これだけのエビデンスや設計プランを見せられたらすぐにでも買い手が付きそう。これってお買い得なのでは?

西村 そうですね。モデルハウスも、隣接する「旗竿地」についてもそれぞれの敷地特性を徹底的に検証して導き出した「最適解」を提案しています。ぜひ、多くの方に足をお運びいただき、見ていただきたいで1月月中旬~下旬のオープンを楽しみにしていてくださいね。

こだわりの設計デザインについて

━━では、いよいよこだわりの間取りについて教えてください。

宮﨑 まず、大抵の設計では、南に主寝室が置かれると思います。もっとも日当たりがよい明るい場所ですから。ところが、太陽が出ている時間帯ってみなさんほとんど寝室にいないですよね?

当山 確かに、寝室を使うのは夜ですね。

宮﨑 そういう「よくあるセオリー」で考えるのをやめて、この土地に家を建てるなら何を優先にするかな?本当に必要な空間って何か?などを考えてデザインしていきました。まず第一に、先ほどもお話しした通りこの土地は南西〜東一帯にかけて広い範囲での眺望がとても素晴らしいので、1日でもっとも長く過ごすリビングやダイニングを2Fに作ることを優先させました。

━━そうなると、1Fは玄関と寝室だけ・・・ではなさそうですね?

宮﨑 玄関から入って最初の大きな空間は、土間で作られたパブリックスペースになっています。実際にはいろいろ計算した上で設計しているので表の通りから見られることはないのですが、心理的には『見られているかもな』『見られてもおしゃれだからいいかな』というのがパブリックスペースですね。最近は、玄関や土間スペースを綺麗な空間にしていらっしゃる方は多いので「こういう土間のある家がほしい」と言っていただける方は多いのかなと思っています。あとは、最近の要望で特に多いワークスペースは絶対に必要だろうということで、土間の奥に続くスペースに書斎をつくりました。

━━やはり、お勤めの方も最近はリモートワークが増えているということですか?

宮﨑 この数年は、自宅でおしごとができるワークスペースがほしいというご要望がほぼ100%ありますね。ただ、ずっと家にいるとON/OFFの区別がつきづらくなると思うので、リビングのくつろぎスペースとは離してできるだけパブリックスペースに近い位置に書斎をおきつつ、とは言っても書斎自体は(趣味や読書など)仕事以外でも使うスペースなので、奥の主寝室とダイレクトにつなげたり、土間をセカンドリビング的にも使える様に暖炉を置けるようにもしています。

西村 最近のKIBARIでも、玄関からワークスペースまで続く動線や広い土間が、大人気ですよね。

宮﨑 そうですね。最近のKIBARIは土間のデザインがいくつも続いています。今回も、この土間をモデルハウスの特徴にしたいなと考えました。

当山 このストーブ、KIBARIオリジナルのデザインでコラボストーブを作ってもらっています。このストーブのメーカーさんがKIBARIのコンセプトにすごく共感してくださって、KIBARIに合うストーブを作ろう!ということになりました。

━━KIBARIの素材とデザインへのこだわりが、どんどん認知されてきていますね。

当山 そのほかに、実は、ソファも『KIBARIオリジナル』があるんですよ。以前からKIBARIの家に合う家具をコーディネートしていただいているカンディハウスさんにオリジナルのファブリックをセレクトしてもらい作ってもらっています。店舗では販売していない特別バージョンです。モデルハウスのオープンに間に合うかどうかまだわからないのですが、完成次第、ブログでご紹介させていただきます。

━━これらの家具も、分譲モデルハウスについてくるってことですよね?

当山 そうです。せっかくかっこいい家をつくっても、自分でインテリアコーディネートできる自信がないという方も一定数いらっしゃるので、それであれば、プロが見立てた、素材よし、デザインよしの家具をつけましょう!ということになりました。

家具の参考(KIBARIオーナー様「田舎モダンPart2」より)

宮﨑 ちなみに、この上の参考写真の天井にある間接照明は、今回のモデルハウスにも使おうと思っています。天井にダウンライトがなく広い範囲を間接照明が照らしている設計です。最終的なコスト調整もあるのでまだ確定ではないのですが。この間接照明のアイデアはこのお家以降、よくおすすめさせてもらっています。

━━2Fリビングという点も、上の「田舎モダンPart2」と共通ですね。

宮﨑 はい。ただし、モデルハウスの2Fリビングには敢えて真南にドンと大きな窓はつけていません。理由は前半でもお話しした通り、真南の抜けはあまりよくないからです。その代わり、東一帯は視界に障害物がないので、屋根付きのバルコニー越しに全面開口にして景色を取り込めるような設計になっています。バルコニーをここに設けているのは1Fの考え方と同じで、表の通りや隣家から部屋の中が見えにくくするためです。このほか、キッチンとダイニングにもそれぞれ南西・南東に借景がのぞめる位置に窓を配置しているので、真南に大きな窓がなくても十分な明るさと広がりを感じられると思います。

完成予定図

━━奥の土地(旗竿地)用にも設計プランを作っているとのことですが、こちらも、いずれは家を建てて売るということですか?

西村 いいえ、奥の土地(旗竿地)はひとまず土地だけで販売しています。もちろん、手前の家(=モデルハウス)を建てた建築家による設計プランもご用意があるので前の家とのバランスや、日当たりや眺望など、土地の特徴を最大限活かしたベストなプランはご提案できると思います。あとは実際にモデルハウスが完成すれば、家の構造、素材、快適さを実感していただけるので、土地だけで買うよりも十分イメージが湧くと思います。いまマイホーム計画中の方もこれからお考えの方もどうか焦らず、オープンをたのしみにしていてくださいね!

こちらの記事も参考になります

KIBARI®モデルハウスに関する連載記事です。併せてご覧ください。

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